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円満の権化
私立悠弦高校において、家庭科部と言えば名の知れた部活であった。
部の趣旨としては、家庭科に関わる様々な事を皆で楽しく学ぼうとなっている。
だが、彼らの真骨頂は料理にあった。
もちろん、日々の活動においては、様々な家庭科に関する活動を行っているが、その全ては文化祭を目標に行われていた。
「家庭の味」
文化祭で、家庭科部が毎年決まって開催する特別食堂の名前である。
家庭科部が毎年行っている全ての活動は、照準をこの文化祭に定めて行われていると言って過言ない。自分達で毎年のようにエプロンを自作し、メニューを決め、そこに記載する栄養素やカロリーなどを調べ、材料費等から売価まで計算する。
提供される料理は、どれも質が高く、毎年好評で行列までできるほどだ。
安全面、衛生面などの観点から、この食堂についてはいくつもの反対意見が出された。
だが、その度にありとあらゆる手段でその反対意見を円満にねじ伏せた。
それは徹底した根回しだったり、試食という名のデモンストレーションだったり、料理勝負だったりとさまざまであったが、結果としては円満に、そして家庭科部に有利な形で場がおさまった。
反対者達は知らぬ間に自発的な握手をさせられ、反対意見を引っ込めるほかなくなってしまうのだ。
その徹底して円満解決に拘る姿から、いつしか家庭科部は「円満の権化」と呼ばれるほどになっていた。
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