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つまり、炎の力は光の力と同じように、明かりを灯して周りを照らす効果がある事から、光と対局の力である闇が反応し、自らの闇を照らすことのないよう、炎を黒く染めたと言う事だろうか。
ユハンの中に眠る闇の力が他の力に反応するのは、同等の力量を持つ奇跡の子の力のみと思われていたが、一部、光と似た所を持つ炎の神竜の力が、強大な力であるがゆえに、闇が反応してしまった結果、炎が黒く染められたのだった。
「おいおい、光の力とちょっと似てるからって事かよ!?光と炎なんて、照らすほかに共通点なんかねぇけどな?」
ユハンの顔を覗き込むように言う黄金の竜は、首をかしげながら大きな口を開いた。
「破壊する力なんだから、どちらかと言うと炎は、闇寄りだろ! ん~なんかもう、大変だな! 一つの体にでっかい力が二つあるってのも」
黄金の竜が悩むように首をかしげながら幼い声を響かせると「シエルは……」と、カイムが呟くように口にする。
「シエルは大丈夫だろ! 灰の力はあらゆる力と均等を保つんだ! 全く! 闇も見習って欲しいもんだ」
宙を漂う黄金の竜は、大きな声を上げながら、ユハンとサイキの周りをぐるぐると回り始めた。
ユハンは困ったように下を向いて、黒猫の体を撫でているが、サイキは涼しい顔をして、辺りを見渡している。
「分かっただけ、前進です」
多くの事実を知った事で、張り詰めたような空気を漂わせていた辺りに、サイキの冷静な声が響くと、周囲の人間は自然と落ち着きを取り戻して行く。
自分の力を目にした子供たちは、それぞれの問題点を明確にし始めた。
これから、さまざまな訓練を積んで行く事になる子供たちは、草原を駆け回りながら、逞しく成長して行く事だろう。
自分の力と初めて向き合った次は、体力を付けるために草原を駆ける訓練を言い渡された子供たちは、笑顔を浮かべながら家の周りをぐるぐると走り回っていた。訓練は毎日行われるが、並外れた体力を持つ彼らにとって、体力を付けるための訓練はつらく厳しいものではなく、まるで友達と駆けっこして遊んでいるかのような感覚だった。
翌日、サタラーの書面に記された、子供たちの力の説明とこれから行う訓練内容に目を通した親たちは、子供たちの成長を見守りながら、力と体力強化の訓練を行って行く事を決定した。
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