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「あ! シエルー! おはよー!」
眉を顰めていたカリュウは、すぐに笑顔を取り戻して、手を大きく振って、家から出て来たシエルの下へ走って行った。
「…………」
急に笑顔になって走って行ったカリュウを見ながら、不貞腐れたような顔をするティラン。
「大丈夫だよ。行こ?」
リキュウはティランを宥めるように優しく言い、カリュウの跡を追って走り出した。
仏頂面のまま、カリュウたちがいる場所まで少し遅れてティランも足を進ませた。
シエルは立ち止まって、走って来るカリュウたちに笑顔を向ける。
「皆、おはよー!」
シエルは、辿り着いた皆に向かって気さくに声を響かせた。
ミライやユハンが家から出て来たのはそれからすぐ後の事だった。
ミライは両親と離れてカリュウやシエルがいる所へ走って行くが、ユハンはサイキから離れようとせず、彼女と黒猫と共に大人たちの所へ向かおうと足を進ませた。
「ユハンー!」
ユハンの下へ走りながら、シエルが声を響かせる。
「シエル、おはよう」
白に近い金色の長い髪を漂わせながら、シエルに笑顔を向けるユハン。
「行こ!」
ユハンの下へたどり着いたシエルは、彼女の手を握ってカリュウたちがいる所へ走り出した。
急に手を引かれたユハンは驚いたような顔をし、後ろを振り返ってサイキの顔を見たが、サイキは手を緩やかに揺らして「行ってらっしゃ~い」と口にしていた。
ユハンの手を取って、カリュウたちの所へユハンを連れて来たシエル。
「ユハン、おはよう!」
笑みを浮かべて言うミライを目にしたユハンは「お、おはよう」と、苦笑いを浮かべていた。
「おめぇ何であっち行こうとしてんだよ」
ティランは不思議そうな顔をしてユハンに言った。
「サイキさんと話してて気付かなかったみたいだよ! 皆、集まったね」
まるで怒っているかのようなティランの口調に、ユハンが怯えた顔をし始めた事に気付いたシエルは、すぐに言葉を発して彼女をフォローした。
シエルは、ユハンが皆の輪に入る事を苦手としている事をよく分かっていた。
力を扱う訓練は、シエルと同様、完璧にやりこなすユハンだったが、体力強化の訓練では、シエルやカリュウたちに着いて行けず、いつも最下位になってしまう。
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