第四章 出会い

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 彼らが優秀な結果を残した世界模試から、六年の月日が流れ、十六歳となった神崎(かんざき)託叶(たくと)は、心がとても優しい明るい少年へと成長していた。  容姿も端麗で、雑誌のスカウトが後を絶たず、本人は断り続けている。  高校に、首席で入学した神崎(かんざき)託叶が、入学式で、入学にあたっての(ことば)を朗読した姿は、集まった記者たちにより、次の日には全国のニュースで流れていた。体育館を埋め尽くすほどの記者の数は、託叶も驚くほどだった。  通常であれば問題になりそうな事態だが、光の子が入学すると言う事で、高校側も、記者たちの訪問は覚悟していたのだろう。生徒や保護者に迷惑がかからないよう、体育館の二階に、記者たちが撮影するための場所が設けられていた。  入学式を終えた託叶は、先生に呼ばれて校長室へ足を運んだ。  戸を開けて中に入って行くと、学校の校長と思われる人物と、数人の教員たちが立っていた。 「この高校へ入学を決めてくれてありがとうございます。おかけください」  校長は、低い声で言い、皮で作られている茶色いソファーを指して託叶を誘導する。まるでお偉い政治家でも招いたような対応だ。 「こちらこそ、入学させていただき感謝しております」  堅苦しく一礼して言う託叶は、茶色いソファーへ腰を下ろした。 「神崎さんが入学すると決まって、すぐにあの機関から連絡を受けました」  校長は、託叶を真っすぐに見つめながら静かに口にした。 「GFからの推薦です。条件は、"特例制度"に合格する事、そして、一年後の世界模試で、優秀な成績を残す事の二つです」  校長の言葉を聞き、眉を(ひそ)める託叶は、喜ぶ様子もなく、目を伏せて難しい表情を浮かべていた。  現在GFメンバーとなり活躍している野々村竜や雨宮直人、大宮和樹も推薦を受けた時、同じ条件を言われている。  特例制度とは、高校を卒業と同時に、大学の卒業の資格をもらえる制度である。高校生活三年間の間に、高校の勉強は勿論(もちろん)だが、その国の学力でトップの大学の勉強も同時に行い、高校卒業と同時に、大学卒業試験を受ける。大学卒業試験に合格すれば、高校卒業と同時に、大学卒業の資格も得られるのだ。この特例制度は、過去実施された者は、野々村竜と雨宮直人、そして大宮和樹の三人だけだった。
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