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「君の背中には、とても大きなものが乗っています。だからこそ、大人たちはさまざまな事を決めて行きます。でもね。その中には、間違いもあります」
優しく言い聞かせるように言う校長の声を聞いて、目を丸くしていた託叶は、段々落ち着きを取り戻して行くかのようだった。
「どんどん意見を言ってください。そのために、たくさんの事を考えて、悩んでください。これは君の人生です」
校長は優しくほほ笑み、託叶に言った。
「ありがとうございます」
今まで黙って聞いていま託叶は、眉間に寄せた皺をなくし、ほほ笑みを浮かべながら言った。
光の子が笑顔を見せると、周りは不思議と、とても優しい空気に包まれた。
部屋の中に太陽の光が降り注ぎ、暖かい日差しが彼らの体を温め、窓で靡くカーテンは、涼しい風を運んでくれる。校長や教員たちは、あまりに居心地が良くなった空間に、少し驚いているようだった。光の子は、全てに癒しと安らぎを与えるのだ。
「……別室で授業をの事ですが、分かりました。高校からは、皆と一緒に授業を受けましょう」
校長は立ち上がりながら口にすると、託叶も立ち上がり「ありがとうございます。これから、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします」とやわらかい声を響かせ、校長や教員に深々と頭を下げた。
校長室から託叶が出て行くと、まるで緊張の糸が切れたかのように、教員たちが口を開き始める。
「やはり、しっかりした子ですね~光の子は」
「皆と授業を受けたいか…。そんなのが初めて言う意見なんて、ある意味、かわいそうかもな」
「校長、別室での授業、本当に良かったのでしょうか?」
託叶が出て行った戸を見ながら、驚いたように声を上げる者や、独り言のように光の子に同情心を口にした者。
皆それぞれ口を開く中、校長に質問を投げかけたのは、教頭を務める男だ。
「別室での授業の件は、本人の意見を尊重するようにとの事でしたから。それに、彼に教えられる人は、もう居ないとの話も出て来てましたしね」
校長は、託叶が出て行った戸から目を逸らす事なく真剣な表情で言うと、教頭たちは目を丸くして彼を視界に入れた。
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