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成瀬南。
前回の世界模試で486位と言う成績を残した少年だ。
神崎託叶と成瀬南は違う学校だったが、同じ年であるため、他の天才たち以上に、お互いによく名前を聞いていた。それは、小学校、中学校での模擬テストの順位で、いつも二人が一位と二位を争い、トップを独占し続けて来たからである。だが、光の子である託叶は、GFに入った他の三人と同様、メディアで多く特集を組まれて来たのに対し、成瀬南は天才たちの中で比較的目立つ存在ではなかった。
成瀬は、同じ年に光の子が存在する事を、いつしか疎ましく思っていた。
子供の頃から、テレビで騒がれている光の子と比べられ続けて来た成瀬は、大人になるに連れて性格に大きな影を落とす。何に対してもやる気を示さなくなったのだ。だが、天才である彼は、対して努力しなくても何事も人並み以上にできてしまう事も大きく影響しているのかもしれない。
「君が……?」
後ろを振り返ったまま固まる託叶に対し、席に座った成瀬は疲れたようにため息をはき「あぁ」と面倒臭そうに声を上げた。
もう一人の同じ年の天才が、まさか同じクラスになるとは思っていなかった託叶は、驚きの表情を浮かべたまま、前を向いて次の人の自己紹介に耳を澄ませた。
全員の自己紹介を終え、半沢先生の話を聞いた後、少しの休み時間を迎えた託叶は、すぐに後ろを振り向き成瀬の姿を視界に入れた。
突然後ろを振り向いた託叶に、一瞬、驚いたように体を強張らせた成瀬だが、すぐに面倒臭そうに眉を顰めていつもの表情を取り戻した。
「なんだよ」
成瀬は低い声を出す。
「あの成瀬南だよな。よろしくな」
成瀬とは対照的に、気さくに話しかける託叶。
何の警戒心もなく接して来る光の子に成瀬はさらに眉を顰め、まるで鼻で笑うかのように吹き出した。
「おまえは、誰からも好かれて来たんだろうな。だから、自分も好かれるのが当たり前だと思ってる」
成瀬南は、光に身を包んだ託叶に皮肉交じりの笑みを浮かべて口を開く。
そして「二度と気安く話し掛けんな」と続けた。
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