第一章 光と闇

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 彼女は言葉を知らない。自分の姿はもちろん、人の姿すら見た事がない。誰かの声を聞いた事もなければ、自分のほかの生命の存在すら知らないのだ。  すべての人は、彼女の事を知っていた。どこに幽閉されているのかも、人々は皆、知っていた。なのに、誰一人として、彼女に会いに来る者はいない。それは、彼女が闇の子という、人々に恐れられる存在だからだ。  皆に恐れられている闇の子だが、彼女は、周りに害をもたらした事もなければ、誰かを傷つけた事も一度もなかった。    彼女はただ産まれただけ。光と闇が存在する世界に、闇として産まれただけ。 ーーー・・・ ーー・・ ー・
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