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「私、先生たちに知らせて来ます!」
看護師の一人が喜びの声を上げ、小走りで、分娩室から出て行った。
男は涙を流しながら、妻と光る赤ん坊を見詰め感激の声を上げる。
「間違いない。まさか”光の子”が俺たちの子供で産まれて来るなんて、奇跡だ」
バタバタとあわただしい音が響いて来る中、お産をするために設けられた部屋の中は光と感動で満ち溢れていた。感動し涙を流す夫婦に、口元をおさえて目を丸くする看護師。
「神崎さん!」
あわただしくかけて来たのは病院内にいる医者や看護師たちだ。彼らもまた、奇跡的な瞬間に感激し、笑顔を浮かべていた。
神崎と呼ばれた男は、妻と赤ん坊から視線を外し、駆けつけた先生たちへ笑顔を向けた。
「華奈子さん、頑張りましたね」
看護師は涙を浮かべながら、”光の子”の母に声をかけた。
「いいえ、皆さんのおかげです。ありがとうございます。清さんも立ち会ってくれてありがとう」
華奈子は夫の顔を、目を細めて見上げた。清は、華奈子の腕に手を置いて優しくほほ笑み返している。
「大切にお預かりしますので、お母さんは、少し、休んでいてくださいね」
看護師が優しく言い、光る赤ん坊を丁寧に抱く。
「よろしくお願いします」
華奈子は優しい声で言い、赤ん坊から手を離した。
神崎 清
神崎 華奈子
この二人の間に産まれた子供が、”光の子”と呼ばれる奇跡の子だった。
光の子が島国に誕生したと、数日後には世界中のトップニュースになる事だろう。
感動で胸を暖める中、何か強い思いを心に決めたかのように、清と華奈子は目を合わせ続けていた。
平和の象徴とされる奇跡の存在、”光の子”の親となった二人は、言葉を交わす事はなく、お互いの手を力強く握っていた。
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