第一話 淫獣退治

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「いいえ。先週この村の少女が襲われて以降、目撃情報はありません」 「移動したのかも知れないな……厄介だ」 こんな任務は、早く終わらせて王都に戻りたかった。 王は何故自分達にと、恨みがましくさえ思う。 ピジェ村では一番広い豪農の屋敷を間借りしているが、所詮は田舎者の屋敷だ。居心地はあまり良くはなく、フェリクスは既にうんざりしていた。 「あと、言いにくいのですが……実はこの淫獣退治に名乗りを上げた騎士団がありまして」 「……まさか。またあの男か」 軽い頭痛がして、フェリクスはこめかみを押さえた。あの男が絡むとロクなことにならない。 こうしては居られないと、嘆息しながら腰掛けていた椅子から立ち上がる。 「エブリー。奴はどこにいる」 「はい、酒場で……楽しんでいらっしゃいます」 「また昼間から……ああ、全く」 「この間みたいに、娼館に迎えにいく羽目にならないだけマシですよ」 副官のエブリーは、そばかすの浮いた頬を掻いて苦笑いを浮かべた。 確かにそうだが、そもそも昼間から遊び歩いているその男が悪い。 不機嫌を隠さず肩を怒らせて、フェリクスはエブリーを連れて部屋を出る。 王国は貧富の差が激しい。     
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