コンビニ模様 ～とある店長の話～

店長募集

　その日、俺は何気なく入ったコンビニで店長募集なんて張り紙を見つけて、一瞬笑いそうになった。
　この川越駅前にあるローソンは、店長不在らしい。
　バカな話だ。
　でも、それをバカだバカだと本気で笑う気にもなれなかった。
　トラック運転手を辞めて実家に帰ったものの、次に出来る仕事もトラック運転手だなんて馬鹿げている。
　でも、皆我慢して何かしらの配送の運転手を続けているか、転職を上手いことやってもどうせ肉体労働だった。　
　そういう世界にいた俺からすれば、店長不在というちょっと馬鹿げた状況のコンビニに少しばかり魅力すら感じてしまう。
　トラック運転手は、自由を求めていると思う。
　少なくとも俺はそうだ。
　がんじがらめに縛られている時間の中でも必ず自由を求めていた。
　コンビニの店長なんて店を好きに出来るわけだし、駅前なんて立地もいいんだから潰れる心配もない。
　加えて、コンビニでのアルバイトもしたことがあるし、人間なんて色々いることももう分かっている。
　きっと上手くいくだろう。
　俺は実家に帰ると、部屋に籠ってスマホから店長にならせてくれと応募した。