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「大変お待たせ致しました。ローソン川越駅前店三好です」
「あ、あの」
「はい」
「アルバイトの……求人広告を見まして」
たどたどしく、そして声の小さな女性に少し苛々しそうになる。
ここの時点で落としてしまってもいいんじゃないかと思うけれど、本人の経験と頑張りは、仕事をしてからだと、俺は思っている。
「はい。わたくし、店長の三好です。面接をご希望ですか?」
自分でも、店長という職業に慣れてきたなと思う。
当初は電話応対が一番苦手で、この人みたいに喋るのが苦手だった。
トラック運転手も仕事で電話を掛けることはあるけれど、堅苦しい言葉は使わない。
配送業でも電話を始終持たされるとそれが厄介だから、俺は敢えてそういう縛りのない運転手をしていた。
「はい、あの。面接をさせて頂きたいと思いまして。まだ求人は……」
「随時募集してますよ。いつ、面接に来られますか? 明日でも平気ですか?」
「明日!? あ、いえ。はい。大丈夫です」
「大丈夫ですか? 別の日でもいいですよ?」
「いえ。明日、行きます」
急に口どりがしっかりしたその女性に俺は少し興味を持った。
「お名前は?」
「御手洗と申します。年齢は、あの、48です。大丈夫ですか?」
「ああ、良く働いてくれた人は50代でしたから、大丈夫ですよ。年齢よりもやる気です」
「あの、コンビニでの経験もありませんが」
「それも、まあ、その人次第でなんとかなりますから。まずは面接してみましょうか。それとも、やめます?」
「いえ! 受けます!」
「じゃあ、明日の午後2時に店に履歴書と写真を持って来てください。店はご存知ですよね?」
「はい。では、あの、よろしくお願いします」
「どうぞよろしくお願いします。失礼します」
「失礼致します」
そう言って、俺は電話をすぐに切った。
放っておくと、さっきの女性は俺が切るの延々待ちそうだったからだ。
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