迫り来る罠

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 サンドとの激闘を制してから数ヵ月後。シンドウに心国全域を任せたレナは、財国に留まり国力を高めていた。  冬の訪れと共に財国周辺は白銀の景色を見せている。しかし、厳しい寒さを感じさせない程の軍議が熱く行われていた。 「先手を打って攻め込むべきだ! 後手に回ると身動きが取れなくなる」 「いや、知の国は何を考えているか分からない。迂闊な行動は身を滅ぼすぞ」 「取り敢えず春の訪れを待って攻め込むのが良いかと」  様々な意見が飛び交う中、門兵がトウマの下へと駆けて来る。 「シンドウ様から報告なのですが……」  シンドウは政治内容の報告書を作成し、心国の情報を毎月欠かさず送っていた。 「報告書がどうした?」 「それが、タツマキと名乗る将軍が直々に来られています」 「タツマキ? 確かシンドウ様が後継者にと連れて行った者の一人だな。よし、客室へ通してくれ」  門兵が下がると、トウマは疲れ切った顔のレナへ耳打ちする。 「心国から特別な使者が来ております。今日の軍議はここまでとしましょう」 「心国から? 分かりました」  どれだけ経験を重ねても、軍議の内容だけは未だに理解し難い。頭では必要さを分かっていても、優しいレナの心が無意識に拒絶しているのだろう。胸を撫で下ろして頷くと、トウマが白熱する軍議を遮って叫んだ。 「本日の軍議はここまでとする。以上、解散」  軍議が終わり、クミだけが残ってレナの会話に聞き耳を立てる。 「それで、特別な使者とは?」 「以前、シンドウ様が後継者にと連れて行った者になります」  賢者と名高いシンドウの後継者と聞き、興味が湧いてきたクミは間に割って入った。 「トウマ君、私も行っていい?」 「別に構わんが、お前は口が軽いから気をつけろよ。重要な事かも知れないからな」 「大丈夫だって。さっ、早く行こっ」  軽すぎて不安だ……そう感じながら、レナは客室へと向かった。
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