迫り来る罠

3/5
前へ
/38ページ
次へ
 客室の扉を開けると、精悍な顔付きの兵士が視界に入った。その青年は長い黒髪で、トウマに似た雰囲気を感じる。  戸惑うレナに気付くと笑顔を見せ、駆け寄って(ひざまず)いた。 「レナ様にトウマ殿ですね。初めまして、タツマキと申します。それと……」 「クミと言います。よろしくねっ」 「ああっ、あなたがクミ殿ですね。宜しくお願いします」  トウマに似ているからだろう。微笑むタツマキを見て、レナは頬を赤く染める。トウマが屈託の無い笑顔を見せてくれたら……そんな妄想が膨らんで消えない。 「どうされました?」 「えっ!? あっ、いえ……その……」  怪し過ぎる返事に反応して、クミは黒い笑みを見せる。それに気付かない鈍感なトウマとタツマキは、何事も無かったかの様に話し始めた。 「直接お伝えしたい事があり、シンドウ様の指示で来ました」 「伝えたい事とは?」 「その前に、今月分の報告書から提出させて頂きます」  テーブルの上に心国の地図が広げられる。その地図には兵の配置や新しい施設など、心国で行った政治内容が細かく記載されていた。 「シンドウ様からの報告書か。いつも目を通しているが、この細かさは相変わらず凄いな。兵の配置や政治の内容など申し分ない……ん?」  地図の隅まで目を走らせると、先月までは無かった建物の印に気付く。 「それは新しく作られた兵舎ですね。この位置なら西、東、南のどの方角でも援軍を送る事が出来ます」 「そうか。北にあるから光国に……まあいい。とにかく見事な采配だ」 「有難う御座います。これは私とフブキで配置などを考え、毎月作成しております。そこまで褒められると照れますね」  予想外の返答だったのだろう。冷静なトウマが目を丸くして驚きを見せた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加