迫り来る罠

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「どういう事だ? シンドウ様の采配ではないのか?」 「シンドウ様は最後に確認して、必要であれば訂正しているだけです」 「フブキは一緒に来てないのか? 出来れば二人に話を聞きたい」 「フブキは別の調査をしています。その調査ですが……これを見て頂けますか?」  ここまでは笑顔を絶やさなかったタツマキが、神妙な面持ちで懐から手紙を取り出した。  内容を確認したレナとクミの表情が青ざめる。 「これは知の国からシンドウ様へ宛てられた密書です。レナ様を裏切って、独立しろとだけ書かれています。無論、シンドウ様にそんな野心はありません。そして密書を確認したフブキは、本当の意味が隠されていると述べました」 「確かに不自然だな」  トウマが密書に書かれた文字を確認して答えると、理解の出来ないレナが横から口を挟んだ。 「あの……不自然とは?」 「この密書は、レナ様を裏切れとしか書かれていません。そんな密書を渡されて裏切る者などいないでしょう。成功したら莫大な恩賞を与えるとか、大臣の位を用意するとか言われたら話は別ですけどね。つまり、レナ様とシンドウ様の絆を試すなど、別の意味があるはずです」  トウマの洞察力が凄い事を知っているレナとクミは驚かずに頷く。しかし、初めて見るタツマキは背中に冷たいものを感じた。 「さすがトウマ殿ですね。心国と財国に戦力が二分されている今、フブキはトウマ殿の立ち位置が最も重要だと考えています。そして、仮説を立てました。その内容は……」  仮説を聞いて黙り込むトウマを、不安になったクミが覗き込む。 「その……フブキさんが言う仮説は正しいのかな?」 「暫くすれば答えは出る。無駄になったとしても、対策はしておこう。勿論、タツマキにも手伝ってもらうぞ。それから、レナ様達はタツマキが財国に残る事を伏せておいて下さい。表向きは、使者としての用事を終えて帰ったとします」  レナとクミが首を傾げると、横からタツマキが答えた。
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