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「既に策を立てられたのですね。分かりました」
優しく微笑むタツマキ。しかし、トウマは表情を崩さずに睨み付ける。
「ある程度は策の内容に気付いたか。タツマキとフブキは優秀な軍師の素質を秘めているな。だからこそ確信した。この話とは別に何かを隠しているだろう? 例えば光国……後で詳しく聞かせて貰うぞ」
さらに先を見透かされたタツマキは、味方であるトウマの言葉に対し肝を冷やす。レナとクミは、二人が何を話しているのか見当もつかない。
「さすが軍師の一族……神算鬼謀の持ち主ですね。先程の報告書で気付かれたのでしょうか。光国に関しては、シンドウ様とフブキが中心で進められています。私の出来る範囲で宜しければお話させて頂きますよ」
「よし、タツマキはこの後も私の部屋で話をしよう。レナ様はお休み下さい。クミ、くれぐれも口を滑らすなよ」
トウマは念を押して、タツマキと共に部屋を出て行く。それを見送ると、クミが楽しそうに口角を上げた。
「レナちゃん……タツマキ君を見て、ドキッとしたでしょ?」
「えっ!? そっ……そんな……」
「昔のトウマ君に似てるからね。歳はレナちゃんと同じくらいかな?」
恋愛の事だけは、軍師の一族に引けを取らない洞察力を見せる。
「本当は、ちょっとだけドキッとしました。トウマさんが無邪気に笑ったら、こんな顔するのかなって」
「見た目は愛想がいいトウマ君だったよね。優しそうだったから、タツマキ君に乗り換えちゃうのはどう?」
「それは無理ですよ。だって……私の想いは、十年前のあの時から変わりません」
「十年前って言うと、トウマ君に助けられたって話? そんな昔から王子様だったら、他の男に勝ち目は無いか……その時に惚れたのが、ゾイ君じゃなくて本当に良かったよ」
「ふふっ。ゾイさんだって、いつか本気で守りたいと思う女性が現れますよ」
一途なゾイは想像が出来ない。そう言いたかったが、純粋なレナに話を合わせて言葉を飲み込む。
恋愛話に名前があげられている事実を、トウマもゾイも気付く事は無かった。
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