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「いや、部活の話ししてたら『部活のあと残って自主練してるなんてえらいですね。応援してます』って言われちゃってさあ」
「ふーん。……で?」
「え?」
雑に手を動かして、書ききった日誌を奥山がパタリと閉じる。
「続きは? まさかそれだけで沢井ちゃんと付き合えるとか思ったわけじゃないでしょ?」
「……えーと」
「待って。まさかそれだけで本気でカノジョできるかもって思ったわけ?」
ばっかじゃないの、と語気を荒げて奥山が吐き捨てる。
呆れている、というより怒っているように感じた。
でも、なんで奥山に怒られなきゃならないんだ。
別にいいだろうが、舞い上がって勘ちがいというか、早とちりするくらい。
冷静になると、確かに色々先走り過ぎたとは自分でも思うけど、関係のない奥山に怒られる謂れはない。……と、思う。
「そんなんだから矢野はカノジョができないんだよ!」
「奥山にんなこと言われる筋合いねえし! 放っとけよ! 夢見るくらいいいじゃねぇか! 誰に迷惑かけてるわけでもねーし!」
「先輩に気を遣ってお世辞言ったくらいで、未来のカノジョ扱いされる沢井ちゃんに迷惑かかってないとでも!?」
「そ……そういう言い方することねぇだろ。まるで俺が痛い奴みたいじゃんか」
「実際痛いんだよ。だって沢井ちゃん、カレシいるし」
淡々と投下された失恋という爆弾に、一瞬頭が真っ白になる。
「はあ!? 聞いてねーし!」
「そりゃそうでしょ。沢井ちゃんとまったくの無関係な矢野に、誰がわざわざ沢井ちゃんのカレシの有無を言う必要があんの?」
「お前は本当に容赦ねぇな!」
「矢野みたいなのにははっきり言ってやんないと伝わらないと思って」
なぜか偉そうに、奥山がイスの上でふんぞり返る。
なんでお前がいばるんだ。
「わかったでしょ?二度とそんなアホみたいな勘ちがいしないように」
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