プロローグ

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大学を卒業し、新社会人になってから約3週間。 「はぁ・・」 家に帰ってすぐベッドに倒れてウトウトし、ようやくお風呂に向かえば疲れ切ってくすんだ顔が映る、これが今の私。 めまぐるしくて日にちや曜日の感覚さえ薄れていく中、時々鮮明に蘇る記憶と今を比較しては嘆いている。 当たり前だけど、会社にはあの頃の仲間は誰もいない。 データ入力を間違えて怒られる時の激しさは、バイト先の比じゃない。 非常階段に隠れて泣いたところで、見つけに来てくれるヒロトくんもいないんだ。 私が忙しくてなかなか返事を返せないことを察したのか、卒業式以降も毎日来ていたLINEもここ数日は音沙汰なし。 おやすみなさいと来たメッセージに対しスタンプ1つで終わらせてしまったのが原因だと思う。 目をつぶると、頭の中でニコニコ笑っていたヒロトくんの顔が、呆れた顔でため息をつく上司に変わる。 お気に入りの服を着てはしゃいでいた私も、いつの間にか制服を着て、間違えだらけの書類を抱えて呆然としている。 ああ、限界だなあ。 目の端にじわりと浮かぶ涙は、弱い自分の分身みたい。 流れ落ちてシーツに染み入ったら、このモヤモヤも一緒に消えてくれないだろうか。 そう願った時、不意に着信が鳴り響いた。
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