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 現在、三人の男が受付に陣取るようにして立っていた。気になるのは、この三人にあまり落ち着きがない様子であること。受付の前を行ったり来たりし、人質を見張る小柄な男にいたっては、銃の扱いに慣れていないのか、アサルトライフルを重そうに抱えている。残りの一人――リーダーと思しき長身の男は看護職員を連れ、診察室へと続く廊下に消えたままだ。  突発的な犯行なのだろうか。  外ではすでに警察が取り囲み、全面ガラス張りの壁の向こうは回転灯の赤い光で埋まり、目が痛い。  織笠はこんな状況でありながら、自分でも驚くほど変に冷静であった。  恐怖がピークを越え麻痺してしまっているのか、あるいは体調の悪さでそれどころではないのか、よく分からない。  精神を肉体から切り離し、俯瞰して色々考えてみる。  もうかなり前から警察による人質解放を訴える声が聞こえるが、犯人グループは一切応える気がない。  そもそもコイツらの要求は?  メディカルセンターをわざわざ襲撃場所に選ぶ理由は何なのか。  金銭目当てなら銀行を襲うはずだ。でなければもっと手近なコンビニでもいい。  今の時代、携帯端末機による支払いが一般的だ。現金を扱う方が珍しいというのに。強盗という行為すら、既に誰も思いつきもしない死んだ手法だ。  受付に精算端末機が設置されてあるが、犯人グループは誰一人として見向きさえしない。 (あぁ、もう……)
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