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 さらに具合が悪くなってきた。全身に泥を被ったかと錯覚するぐらい異常に重い。顔をしかめていると、隣の看護師から「大丈夫ですか?」と気遣われた。一応頷くが、強がりには変わりない。 「おい、そそそ、そこ! 何喋ってんだよ、大人しくしろよ!」  織笠の心臓が跳ね上がる。看護師の女性も肩を震わせた。  小柄な男の突きつける銃口が震えているのは筋力不足に他ならないが、織笠は男の興奮気味な態度にある考えが浮かんだ。  もしかしたら彼らも病を患っているのかも。もしくは精神安定の薬のために――。  突然、パァン! という破裂音が室内に響いた。織笠の周りで悲鳴が上がる。一瞬、自分が撃たれたのかと感じ身を縮こませたが、どうやら違う。  音がしたのは、奥の通路からだ。今ので恐怖のボルテージが頂点に達してしまった。名前も知らない他人同士が体を寄せあう。  数分後、音のした方からリーダーの男が戻ってくる。手には革製のバッグが握られ、もう片方には拳銃。  一緒だった職員がいない。あまり考えたくはないが、悪い予感が胸をざわつかせる。 「どうだったんすか?」  襲撃犯の一人が男にささやき声で訊ねる。 「あったぜ。奥にたんまりと隠してあった」  リーダーの男が誇らしげにバッグを持ち上げると、仲間が沸き立つ。沢山という割りにはあまり重そうでないから、やはり中身は金ではないのだろう。 「これだけありゃ俺らみたいな迷える子羊にも日が当たる。ようやく世界の表に立てるんだ。最高の気分だぜ」 「あいつはどうしたんすか? 殺っちゃったんすか?」 「ったりめぇだろ。調剤室でオネンネしてるぜ。傑作だったな、あの怯え顔は」  男が喉の奥で笑いながら拳銃を左右に振る。 「これからどうするんすか?」 「こいつが手に入りゃあ、もうここに用はない。地下駐車場に急ぐぞ」 「な……なぁ。こ、こいつらはどうするよ?」  小柄な男が首を回し、銃を構えたままに訊く。 「皆殺しに決まってんだろ。足がついちまうからな」  リーダーの男がこちらへにじり寄る。 「おい、殺れ」  リーダーの男が小柄な男に命じる。 「え、おお、俺が?」 「なんでお前がビビってんだよ。その銃は脅しの道具じゃねぇぞ」 「で、でもさぁ……」
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