2

1/4

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/428ページ

2

 メディカルセンターの職員用出入口は一般の外来とは別に、裏口に設けられている。  細い路地には、屹立(きつりつ)するビル群が取り囲み、影が覆い被さる。まるで巨人が見下ろしているかのようだ。天の恵みが届かないために一日中薄暗く、カビ臭さがやや鼻についた。積み重なった段ボールには不要になった資材が入っているのだろう。  そこに三人の人影があった。  警察の封鎖により、近づくことさえもかなわないはずだが、彼らは身を潜めることもなく、堂々と会話を進めていた。 「強盗犯は四人。全て男性。すでに立てこもりを開始して二時間以上経過している。運良く逃げ延びた人々の証言によると銃や刃物で武装しているらしい」  三人の内の一人、黒いスーツの男が淡々と言う。二十代中盤ぐらいだろうか、スラッとした手足に細身のスーツがフィットしている。真面目なサラリーマンかと思いきや、髪型は派手だった。金髪、さらにその上に軽めのパーマまであてている。この風貌で歓楽街を歩けば、まずホストと間違われてしまうだろう。 「警察は何してんのよ? 見たとこ、かなりの動員数をマークしてるけど。最近では中々見ないよ、あんな出張り方」 「時代錯誤のケースもいいところだからな。対処に困っているようだ」 「……そりゃまた非難を浴びそうだねぇ。で? そいつらの目的は?」  軽口を叩くのは茶髪の男。垂れ目がちだが、鋭い眼差し。灰色のジャケットに、黒のインナーという出で立ちであったが、鍛え上げられた精悍な体つきは服の上からでもはっきり分かる。  内ポケットから取り出した煙草に火をつけ、旨そうに紫煙を吐き出す。金髪の男が思わず顔をしかめたが、構わず話を続けた。 「どうやらこのメディカルセンターでは、一般には出回らない薬物を不正に横流ししているらしい。こいつらはどこでその情報を得たのか、その以前から警察も目を付けていたようだけどな。結局、先に奪われた結果になったな」 「違法ドラッグ……ですか?」
/428ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加