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 彼ら『精霊使い』と呼ばれる人種は、この精霊を使役することで、世界を管理する役目の一端を任されている。今使われているのは、通信用端末のようなもので、半径十キロまで離れた相手との会話のやり取りを目的としたものである。電波で発信されているわけではないので、簡単に傍受される心配がないのが利点だ。 「いつも通りだ。アイサ、君がまず対象を攻撃し、その混乱に乗じて俺たちが乗り込む。一気にカタを付けるぞ」  金髪の男が緑の光に向かって話しかける。交信の相手――どこかで待機してあるのだろうその少女は、「りょーかい」と嬉しそうに言った後、何故か沈黙。わずかばかりの間を空け、 『……精霊反応確認! いるいるっ、情報通り四人で間違いないッスね』 「人質は無事か?」 『あー、ちょっとマズイかな。犯人の一人が民間人に……ってアレは何だ? 腕が上がってるのを見ると、銃ですかね。突きつけられてるみたいです』  事態は思いの外、切迫しているらしい。金髪の男は、わずかに顔を歪めると、それでも冷静に光の向こう側にいる彼女へ告げる。 「……分かった。すぐに俺たちは突入を開始する」 『あたしは人質から一番遠くにいるヤツを狙います。その後はよろしくです!』  緑の発光体が細かな粒子となり、空気中に溶けてゆく。交信が終了した。 「……どうやら今回も楽勝そうだな」  煙草を地面に落とし、ブーツで踏み消しながら楽観的に言う茶髪の男。 「少しは緊張感を持て。犯人グループはすでに薬を服用している可能性もあるんだぞ」 「大丈夫だって。カイちゃんは心配性だなぁ」 「ちゃん付けはやめろ」  不機嫌そうに金髪の男は茶髪の男を睨み付ける。 「カイ様の仰る通りです。我々の力を以てすれば、制圧は造作もないでしょう。ですが、追い詰められたネズミは何をしでかすか、時に想像の上をいきます。気を引き締めてかかりましょう、キョウヤ様」  着物の女性が丁寧な口調でたしなめる。 「へいへい。だけどよ、古代的な武器を持った半端な精霊使いが俺たちにかなうと思うか?」 「このメディカルセンターは正確な患者の病状を把握するために、マナを遮断しているからな。襲撃犯もあらかじめ知った上での行動だろう。まぁ、俺たちには関係のない話だがな」  茶髪の男は「でっしょ~?」と頭の後ろで両手を組みながら女性へ体をぐいと寄せた。
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