我が家の風習

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たとえ県道に出たところで、信号待ちで止まるとは思えない。 トモエは諦めて、ゆっくりとブレーキを踏んだ。 当然ベンツも速度を落とした。 そして信号で停止したトモエの軽トラの真横に並んで、そのベンツも止まった。 トモエは両足が完全に震えていた。 黒塗りのベンツの車のドアが開いた。 ベンツは左ハンドルなので、軽トラの運転席のすぐ横になる。 トモエは右の腕をウィンドウに肘を突く感じで、ドアの内側にあるロックを肘でおろした。 出来るだけ不自然な感じがしないように気をつけて。 男はゆうに180センチ以上もある大男だった。 黒のスーツに身を包んでいる。 さきほど見たスキンヘッドに、顎鬚が精悍さを加えている。 トモエはそこで急発進したくとも、恐怖ですでに足は竦んで動かなかった。 唇は震え、目は完全に涙目となっている。 こんなことならあの時、父親の制止をきいておけばよかった。 と後悔もする暇もなく、サイドウィンドウがノックされた・・・
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