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11.決起する者たち
夜が明けていく。
星の瞬く夜空は、太陽の光で白に染め上げられる。夜明けの時だ。
宮崎県と大分県の県境、険しい山々が広がる場所──その一角に、寺院らしき建物があり、その敷地の中で白装束の者たちが集まっている。
死装束を思わせる、烏帽子も着物も袴も、全てが白い服装。そして着物の所々に縫い付けられた板金も、真っ白に染め上げられていた。
はたから見れば、武士や足軽の甲冑にも見える意匠の服装……。
何よりも目を引くのが、彼らの傍らにいるロボットたちだ。
「搭乗甲冑・守衛を出す時が訪れようとは……」
「ともしび機関に火を入れろ! 総員火起こし、機関回せ!」
号令が響くと同時に、彼らは慌ただしく動き出す。
守衛、と呼ばれた木造のロボットたち。
その背中にある金属の円筒に、次々と、高さが一メートルもある巨大な蝋燭が差し込まれていく。
彼らは二人がかりで蝋燭を円筒の中に入れると、先程まで夜の闇を照らしていた松明の火を円筒の中に移し、蝋燭に点火していった。
「各々、装備の調子はどうか。よく点検しておくように」
彼らの装備も特徴が見られる。
一目するだけでは、まるで弓道で使われるような上下非対称の和弓だ。
だが、引き絞った時の力を小さく留める為の滑車と偏心カムや、構えた時のバランスを良くする為のスタビライザーなど、アーチェリーに使われるコンパウンドボウの特徴が取り入れられているのが解る。
「大弓隊、良し!」
さらによく見ると、それよりも小さいコンパウンドボウと刀を装備した部隊、銃剣らしき物が付けられたクロスボウを装備した部隊、バネ仕掛けにより目にも止まらぬ一突きを加えられる槍を装備した部隊があるようだ。
「短弓隊も良し、刃の手入れも抜かりありません!」
「弓銃隊、良し! 全員着剣済みです!」
「管槍隊、良し! 接近戦はお任せを!」
歩兵で構成される部隊が、次々と装備の点検を終え、声を上げる。
そして、ロボットの方もまた……背中の円筒、その上部に仕込まれた物が音を立てて動き始めた。
「ともしび機関、始動!」
カタカタと音を立てながら、静かに回り始める機関。
操縦する兵は、電流と電圧を示すアナログ計器に目を配り、その針が示す数値が増大していくのを確認する。
やがて、それは一定の数値を示した所で、戻るでも進むでもなく小刻みに振れ始めた。
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