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「機関、出力安定! 圧力系統開栓! 補助電動機、回路接続!」
操縦士は、言いながらバルブを開き、そして単純なレバースイッチを手元に引く。
「姿勢固定器、解除!」
最後に引かれたのは、車のサイドブレーキに似たレバーだ。
今まで機体の関節を固定していたブレーキが解除され、機体は一瞬、前に傾いた。
しかし、操縦士はそれに気付いて足元のペダルを蹴って踏ん張り、転倒を防ぐ。
これで、このロボット──守衛は、乗っている兵士の思うままに動かす事ができるようになった。
周りの守衛たちも、着々と動く準備が整っている──。
祭で太鼓を乗せる櫓によく似た太い木造フレームの胴体に、手足が生えているような、そんな外見のロボットたち。
テントのような布張りの屋根には、裏から漆で強化された和紙の板と、鎖が編み込まれている。
それは下半身、脚の大部分を覆う布も同じ様子であった。
ベルトを兼ねた構造の腰帯には刀と短刀がそれぞれ差されており、そして周りの歩兵たちと同じく弓矢を装備している。
ただし、ロボットが手に持つ大きさだ。歩兵が持つ物よりも遥かに太く、長い。
当然、矢も歩兵が持つ長槍のような、重く巨大な矢を矢筒に束ねて背負っているのだ。
そこに、一人の男がやって来る。
彼はロボットと兵たちが集まっている寺院らしき場所の広場に、側近を連れて階段を上がって来た。
見張りをしていた兵が、いち早くその存在に気付き──
「長信様の御成であります!」
後ろの兵たちに向かって、大きな声を上げて知らせる。
部隊を率いる長の到着──兵たちの集団は急いで整列を始め、隊列を組んでいった。
「皆の者、黎明の刻だ! 準備はできたか!」
あっと言う間に隊列を組み、整列した兵たちを前に、長信の激の声が飛ぶ。
「守衛隊、各歩兵隊、共にいつでも動けます!」
「よし。我ら "黎明の機士団" は、これより我らが神国・日の本に手向かった逆賊、新政会新島組組長・新島 玄人を討つべく行動を開始する! 」
長信の演説の傍らで、寺院の建物から、巨大な「何か」が引っ張り出されようとしている。
霊験ある巨木や神社の鳥居に張られるような注連(しめ)縄が巻かれているが、祭事や神事に使う山車とも雰囲気が違う。
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