第1章

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 本音を言えば攻めるより攻められたいし、セックスの相手は基本的に技巧のありそうな年上に限定している。年下は堪えがきかないし身勝手だ。しかし一ノ瀬程すべてを兼ね備えた男が、自分の指や舌で震えるこの状況はなんとも言えない優越感があった。  シャツを脱がせて首筋を舌で辿る。露わになった一ノ瀬の体は、綺麗に筋肉がついて引き締まっていた。 「っ」  一ノ瀬が息を呑む。篠が胸の突起に唇を寄せたからだ。 「くすぐったい? ここ普通に男も性感帯だぜ?」  からかうように舌でつついて、硬度を確かめるように腹筋を撫でた。篠はベッドから下りると一ノ瀬のベルトに手を掛ける。 「目ぇつぶって楽にしてな」  篠は一ノ瀬の前を寛げ、下着ごと少しずらすと、僅かに硬化した分身を手のひらに包む。相手が慌てる気配も構わず、篠はその先端に口付けて、味わうように口内に含んだ。 「篠さ……っ、く」  跳ね起きた一ノ瀬を上目遣いに見ながら、篠は見せ付けるように根元から舐め上げる。一ノ瀬は顕著な反応を見せて、篠は婀娜っぽく微笑む。最初は自分から引き離す為に伸ばされたであろう手が、体内を渦巻く快楽を持て余すように篠の髪をまさぐる。篠は一ノ瀬への奉仕をやめないままで、自分のベルトを外し下着ごとジーンズを脱ぎ捨てた。上着はボタンを一つ外したが着たままにする。そして徐々に乱れていく一ノ瀬の息遣いを聞きながら、唾液と一ノ瀬の先走りで濡れた指を、自らの後蕾に突き立てた。 「……んっ」  本来は挿入する為の器官ではない部分を指で拡げ解していく。口内の一ノ瀬が充分な質量を蓄えた頃には、直接触れていない篠の前も熱を持ち形を変え始めていた。  篠は一ノ瀬から顔を離し、再びベッドに乗り上げた。男を押し倒して腰に跨ると、その中心を己の最奥へと埋めていく。 「っ、篠さん……っ! ぅ」  ずぶずぶと熱塊が体内へと収まっていく感覚に篠は背筋を震わせる。 「ぁ、あ……ん、……は」  一ノ瀬のすべてを飲み込むと、篠は息を整えながら見下ろした。眉根を寄せ、熱に浮かされたような表情で自分を見上げる一ノ瀬に、篠は堪らなく快楽を煽られる。
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