手探りの希望

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突然頭上から降ってきた声に、俺は男の子から身を離して振り返った。 俺の後ろには、ふっくらとした頬に笑みを浮かべた人の好さそうな女性が立っていた。 「ごめんなさい、いつのまにか外に出てたみたいで。こら、お母さん探したのよ。勝手におうちからいなくなったら心配するじゃない」 俺に何度も会釈しながら、その女性は男の子にゆっくりと近づいていった。 目の前の彼の口から、はっ、はっ、という浅い息遣いが聞こえる。 「あら、ポケットに何持ってるの?」 そう言って彼の身体に手を伸ばす母親を、俺は夢中で制止した。 「おにぎりを、拾ってくれたんです。棚から落ちちゃったみたいで、それで。で、ポケットに入れて落とさないようにして、俺におにぎり落ちてたよって教えに来てくれて」 瞬時に作り上げた嘘を、俺はまくし立てるようにして女性に放った。 突然話し始めた俺を一瞥し、女性は彼の手首をつかんだ。 男の子の顔が苦痛に歪む。 彼の様子など意に介さず、女性は彼の手をポケットから引き抜いた。 そこには、ツナマヨネーズのおにぎりがしっかりと握られていた。
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