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記憶の中にあったすべてのことを思い出した二人はそっと顔を伺うようにお互いの目を見つめた。
揺らぐような不安そうな目をしていた。
お互い、これからどうやって生きていけばいいのか不安と恐怖で心がいっぱいいっぱいだったのだ。
あの時言われたままこの世界にやってきたがどう見ても自分たちが魔物と邪神を倒せる力を持っているとは思えなかったのだ。
そして、二人は口には出さずとも前の日本にいた記憶が思い出せなくなっていることも怖く助けて欲しいと願っていた。
二人で遊んだことや自分の容姿、親の顔すらも覚えていなかった。
唯一元の世界で覚えていたのが事故にあったことだった。
芝生がびっしりと生えた丘の上で紗月は体を縮こませて震えていた。
そんな紗月の背中をさすりながらこの状況をどうにかしないといけないと考えていた灯里はフラッグたちからもらったブレスを真剣な表情で見つめた。
「紗月、ここにいても何も始まらない……、だから神様たちから持った贈り物だけでもどんなものか知っておこう?」
紗月は、唇を噛みながら眉を下げてとても不安そうな目で見つめていたが、一人ではないという思いに少しは救われたのかゆっくりと小さく頷いた。
元の世界でもこのように精神が不安定になることが多々ある。
だから、少しでも安定した生活を送りたいと願っていたが、まさか自分が魔物の討伐に出向かないといけなくなるとは思いもしなかったのだろう。
それが不安と恐怖を呼びつけてしまったのだ。
灯里はそんな紗月の隣にあぐらをかいて座りブレスをつけた右手をそっと触った。
すると、黒いブレスからステータスが目の前に出てきたためそっと触れてみると透けるのがわかった。
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