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危機的状況の筈なのに、
自分の存在に気付いてくれた。
ただそれだけで嬉しくて、
涙を流す渡り鳥。
「何で泣いてるんだろう?」
自答するがさっぱり分からない。
無性に嬉しいだけなのに、
涙が止まらない。
笑顔のまま流れ落ちる涙。
「泣くなら他所へ行け」
低くだが良くとおる声が響く。
「だって止まんないだもん」
不貞腐れ、低空飛行からツノを突いて、
ユータウンして間合いをとる渡り鳥。
何で泣いてるか分かんないが、
ここに居たいのだけは確かだ。
何故か悪魔の側に居たい。
こんなにイライラするのに、
離れたくない何て変だ??
悪魔は涙が嫌いだった。
遥か昔よく泣く人族が居たから。
思い出したくない姿が脳裏に浮かびし消える。
退屈凌ぎに、この城の姫を攫ったら、
泣き続けで煩くて、
「城に帰れ??」
根負けした悪魔が叫ぶと、
姫君は満面の笑みを湛えた。
ずっと見ていたいとふと思ったのだ悪魔は。
こんなひ弱で短命な人族など、
ただのおもちゃの筈なのに、何故ずーと笑顔が見たいのか?
悪魔には分からなかった。
姫君は城に戻ったよく年病に伏し亡くなった。
人族は悪魔の呪いと思い、
悪魔狩りを決行した。
本気を出せば、島ごと氷漬けに出来る悪魔があっさり捕縛封印されたのは、姫君の墓の側に居たいから。
北側に王家の墓場がある。
永遠の命など要らぬ。
灰になれたらいいものを。
食べなくても寝なくても
悪魔は死ぬ事はない。
病気かからず、傷は直ぐ癒える。
何故居たいのか分からない。
自由気ままに暇潰しをする日々をそれなりに謳歌していた筈。
あんな泣き虫姫の笑顔が、
脳裏に焼き付いて消えない。
消えるまで居よう。
刻は有り余っているのだから。
漸く薄れてきた姿だったのに、
鳥族の女が忽然と現れ泣いた。
あと少しで消えてこの場から立ち去れたものを。
悪魔は大層怒っていたのだ。
隠して出会った二人ではあるが、
最悪な状況のまま夕刻。
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