第5章 セカンド・オピニオン~高梨夫妻の答案~

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第5章 セカンド・オピニオン~高梨夫妻の答案~

「クリスマス、誕生日、元日の三日間、家族全員で夕食をとること」 一見簡単すぎる高梨あいりの宿題のために、母親の順子と父親の喜憲は電話でもめ始めていた。 「そんなの、そっちでなんとかしろ!」 「でも、あなたがいないとこれは無理なのよ」 順子は喜憲に懇願するが、喜憲は怒った声で返事をした。 「だいたい、あいりの担任は何を考えているんだ!こっちは海外飛び回って忙しいのに。なんとか言ってやらなかったのか?」  実は喜憲は外資系の企業で勤務しており、今は渉外部のエキスパートとして海外を飛び回っている。今はドイツに滞在しており、年末にはイタリアで大事な商談を控えている。 「文句は言いに行ったわよ。でものれんに腕押しだったわ。しかも…」 少し間を空けて、順子は話を続けた。 「もともとは誕生日だけだったの。それを担任が、クリスマスと元日も追加しろ、ってあいりに言ったらしくて…」  電話の向こう側から深いため息が漏れた。 あいりの誕生日は12月27日。海外に居て、しかも大事な商談を年末に控えている喜憲にとってはクリスマスと誕生日、元日のうち1日を空けるのも難しい。それを3日間も空けろ、というのは無理難題だと喜憲は感じた。 「まったく。こっちはどう頑張っても無理だぞ」 「でも」 「うるさい。誰のおかげで飯が食えていると思っているんだ。無理なものは無理だ」  善憲は明らかに苛立っている。 「そんな言い方ないでしょう?こっちの身にもなってよ。どうやってあいりに説明すればいいのよ」 「そんなのはお前の仕事だろ!こっちは忙しいんだ。切るぞ」  順子は一方的に電話を切られた。
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