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第2章 美容師さん、空を飛ぶ?~矢田部夫妻の答案~
「ねぇ、これを見て」
12月のある晩、雅子の母親、貴子は、夫である雅文の目の前に1枚のプリントを置いた。
「これは何だ?」
「宿題ですって。冬休み明けまでの」
「は?」
雅文は事態が飲み込めていない。
「なんの冗談だ?」
「大真面目な話よ。雅子が出した」
「できるわけないだろ。こんなの」
雅文はあきれ顔で言う。それもそのはず。両親揃って空を飛べ、という謎の宿題を出され、雅文は太平洋のど真ん中に突き落とされた感覚になった。
「担任は何と言っている?抗議はしたのか?」
「したわよ。でも、雅子には雅子なりの考えがあるんだろうから、頭をひねって考えろ、って」
「何考えてるんだ。あの担任は」
そう言うと、雅文はため息をついた。
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