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「ーーそろそろ、お腹空かない? お昼にする?」
買い物も一通り済んだ頃、そろそろお腹が空いてきたなと感じ始めた時だった。朝比奈さんの提案に迷うこと無く頷き、二人して七階のフードコートへと向かった。
入ったのは、全国チェーンのオムライス専門店だ。昼を少し過ぎていたからか、客もそんなに多くなく、二人席の所に待たずに案内された。頼んだものが来たら、二人で「いただきます」と手を合わせ、口に運ぶ。
「おいしー!」
二人で同時に同じ台詞を言って、それがなんだか可笑しかった。
食べながら会話に花を咲かせる。夏休みは何をしていたのか、テレビの特番は何が面白かったか、好きな俳優の話とか。話が次から次へと変わるが、どの話も私にとっては新鮮で聞いているだけでも楽しかった。
暫くすると、私達が座っているテーブルから二つほど開けた席にカップルがやってきた。仲良くメニューを見ている姿は、とても楽しげだ。
「うーー、いーなー」
朝比奈さんが、羨ましげな眼差しで二人を見て呟いた。
ーーあれ?
「あ、朝比奈さんは、そ、その、いないんですか・・・・・・? つ、付き合っている、ひ、人」
朝比奈さんは見た目も可愛く、性格も良い。友達も多い彼女は、男子からも結構人気があると小耳に挟んだことがある。
こんな不躾な質問をしても大丈夫だったかな? と心配したが彼女はにこりと笑って「いないよー」と言った。
「こう見えて人生で付き合った人は二人しかいません!」
朝比奈さんは、左手で二本の指を立ててわざとらしく顔をしかめた。
「あーーっ! 東條さん、今、え? 二人?意外に少ない・・・・・・って思ったでしょーー?! 」
「え?! えっと、いや、その・・・・・・」
当たりである。
勿論、私は誰とも付き合った事が無いのだが、朝比奈さんは同性の私から見ても魅力ある人だから、その数は少ないように感じたのだ。
否定することも出来ず小さく頷くと、彼女は「良く言われる」と微笑した。
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