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その二人の内の一人は、彼ーー間宮励、なんだよね・・・・・・。
そう思うと、胸の辺りにチクリと小さな痛みが生じる。正体不明な痛みだったも物の答えを、つい先日知ってしまった。
こんな事くらいで、胸が痛くなるなんて、まだまだ忘れられてない証拠・・・・・・か。
「あ、あの・・・・・・朝比奈さんは、ど、どうして・・・・・・ま、間宮君と?」
ずっと気になっていたこと。
傷口に塩を塗るような質問を自分でしてどうするんだと後悔したが、一度口に出してしまった事は取り返しようがない。
「そういえば、まだその事を話していなかったね。高校から出来た友達には誰にも話してないんだけど、東條さんならいっかな」
「あ、あの、む、無理なら、その・・・・・・」
大丈夫ですーーそう言おうとしたら「やっと東條さんと恋話っぽいの出来るね」と嬉しそうに微笑んだ。
「励はね、中学の時から今みたいな感じで、格好良くて性格も良くて、カリスマ性があるわけじゃないのに、いつも皆が周りにいてね。誰が話し掛けてもいつも優しく笑い返してくれるの。そんな素敵な人、惚れない女の子なんている?」
その言葉に、どきっとした。
不覚にも私もその女の子の中の一人になってしまったのだから。
彼女は悪戯っぽく笑った後、アイスティーを一口飲んで、少し間を開けた後、再び話し始めた。
「私はもう一瞬だった。たまたま席が彼の後ろになって、話す機会が沢山増える度に、どんどん惹かれていった。目が合う度にどうしようもなく嬉しくて、気付いたら告白して付き合うことになったんだけど。ほら、励ってモテるでしょ? 告白した時も「満以外にもいるけど」って言われてね・・・・・・。それでも良い! 励の彼女になれるなら! って、深く考えずに頷いて・・・・・・」
ーーでも駄目だったなぁ。
その言葉は、消え入りそうに小さく呟かれ、朝比奈さんは眉を下げて笑った。
気付くと彼女の話を自分の話のように聞いていた。
「話す度にどんどん惹かれていった」朝比奈さんのその言葉に、私もそうだったのかもしれないーーそう思ったのだ。
彼の容姿がそうさせるのか、それとも雰囲気なのか、人柄なのか。考えても分からない。
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