第5章

42/50
前へ
/293ページ
次へ
恋愛ってもっと単純で薄っぺらいものかと、そう思っていたけど、全然違うんだ。 恋とは何なのか。 付き合うとは何なのか。 ーー私は本当に間宮励が好きなのか。 彼の事が好き、そう自覚はしたものの、何を基準にすれば恋愛的な意味での「好き」という範囲に入るのか、私はそれが良くわからない。 今朝のニュースで真夏日は三十度を超えた時の気温、三十五度を超えた場合は猛暑日になると、お天気予報のお姉さんが言っていたのを思い出す。 恋愛も、天気と同じように誰かと触れ合った時に上昇する体温の数値で「好き」が図れれば楽なのに。そう思った。 でも、一つだけ確かな事がある。 間宮励と目が合うと鼓動が早くなる。話し掛けられると嬉しいと感じるし、もっと彼の事を知りたいとも思う。 これらは彼に対してしか生じない現象だった。 「ーーあっ、私の話ばっかりでごめんね! そうだ! 東條さんの話も聞かせてよ!初恋の話とか」 「えっ?! わ、私は、は、初恋なんて・・・・・・」 流石にこのタイミングで間宮励の事を話すのはバッドタイミング過ぎる。私にとっての初恋は、おそらく彼だから。 朝比奈さんには申し訳ないけど、自分には色恋の話はまだだと言って、その話を終わらせた。 「いつか東條さんにも素敵な人が出来ればいいね。東條さん、こんなに優しいんだもん。きっと分かってくれる人に出会えるよ」 「だ、だと、良いのですが・・・・・・」 こんな私でも好きになってくれる人がいるだろうか。全く想像がつかない。 今はただ、彼に対する身の程知らずの恋心を消し去る事で精一杯だ。 もし万が一、天地がひっくり返る程の奇跡が起き、彼と付き合うことになったとしても、朝比奈さんのように長続きはしないだろう。今でさえ軽く嫉妬してしまうくらいなのだから、付き合ったらどうなってしまうのか、自分が分からなくなりそうで恐い。 だから、もう、良いんだ。 その選択が正しくなかったとしても、私の気持ちなど大した事ない物なのだから。 朝比奈さんの最後の言葉に少しだけ元気を貰い、残りのアイスコーヒーを飲み干した。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

277人が本棚に入れています
本棚に追加