第5章

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ーーいや、いやいやいや。おかしいだろ、自分。 舞い上がってどうするんだ。 嬉しいって思ってどうするんだ。 もう、そういう感情を抱いては駄目なのだから。 明らかに胸が高鳴っている。ドキドキと脈も速くなっている。 「東條さん?」と間宮励の声にはっとし、冷静さを必死に装いながら「どうしたのですか?」とやっとの思いで口に出した。 『試験の前あたりに約束したと思うんだけど、向日葵見に行かない?』 「あ・・・・・・」 その約束、覚えていてくれたんだ。 『忘れてた? まあ、約束したのもかなり前だし当然か。いつも見に行く向日葵畑、今年は生育が遅れてて、最近やっと満開になったみたいで』 向日葵を見に行く約束はちゃんと覚えている。 ずっと楽しみにしていたから忘れる訳がない。 ただ、あれから連絡も無かったから、てっきり忘れられたのかと思っていた。 それに私自身、気付いてしまった自分の気持ちを無くす為に、間宮励とはなるべく距離を取らなければならないから、この約束は無かったものとして考えていたのだ。 ーー行きたいなぁ。彼とあのスケッチブックに描かれた向日葵畑を見てみたい。 それが本音なのに。 「あ、あの・・・・・・い、行けない、です」 『え?』 「すっ、す、すみませんっ! ら、来週からお、お祖母ちゃんちにい、行くので、そ、それでっ・・・・・」 お祖母ちゃんちに行くなんて嘘だ。 でも、会ってしまったら、きっともっと好きになる。 電話でさえ、こんなに苦しくなるのだから。
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