第5章

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「な、わ、私、変なこと、言いましたか?」 『ごめんごめん、ちょっと、お母さんみたいだなって思って』 「お、お母さっ・・・・・・?!」 『東條さんらしくて良いと思う、凄く。家庭的で』 これは褒められているのだろうか。 おばさんっぽいの間違いではなく? 『きっと良い奥さんになるね』 「え?」 『少なくとも今日何してる?って聞いて、掃除してたって答えた女の子は、東條さんが初めてだよ。皆、携帯弄ってたとか寝てたとか、そんな感じ』 「そ・・・・・・そう、なんですね」 やっぱり私は周りの女子と比べてどこかズレている部分があるのかもしれない。でも、掃除も洗濯も誰かがやらなければいけないこと。それ自体を私がやることは何もおかしくないはず。 ただ、友達が少ないが為に、他の人と比べて予定も遥かに少なく、携帯を弄る時間も少ないのだ。 いつもだったら、こういう卑屈な思考になった時、軽く落ち込むのだが、何故か今はそこまでどんよりとした気持ちにならなかった。 たぶん、 間宮励に「良い奥さんになれる」と言われた言葉が、少しだけ嬉しかったのだ。 たったそれだけの言葉なのに、彼がくれる言葉は、私の手を引いて救ってくれる。そんな不思議な力があるのだ。 『ーーあのさ』 私が少しの間、些細な幸せに浸っていると、やや暗い声で彼が言葉を発した。 『この前の祭りの事なんだけど・・・・・・東條さんって、秋森と付き合ってたりするの?』 秋森君と付き合ってる? 誰が? 私が? 質問の意味が分からず少し考える。 お祭りの時に二人で居たから、彼が勘違いをしたのかもしれない。これは早く誤解を解かないと秋森君に申し訳ない。そう思い慌てて否定した。 「つ、付き合って、な、ないですっ! あ、あの日は、その、ふ、普通に、遊びに行った、だけで」 『付き合ってないんだ。そっか・・・・・・変な事聞いてごめん』 「あ、い、いえ」 誤解が解けたみたいでホッと息を吐く。 『・・・・・・秋森とは、やっぱり中学から仲が良いの?』 「? え、えと・・・・・・お、同じクラスになったり、とか、あ、あったので。な、仲が良い、というより、わ、私が、良くして貰ってる、というか・・・・・・た、助けて貰ってます」
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