第5章

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秋森君とは中学から一緒だ。 同じクラスになった時、いつも一人ぼっちの私に、初めて「おはよう」と声を掛けてきてくれた人。私は口下手で秋森君は無口で、会話らしい会話は最近になってやっとだ。だけど、不思議と隣にいると安心する。たぶん、友達のいない私を一番に気に掛けてくれていたのも彼だ。 「あ、秋森君は、本当に、良い人でーー」 『好きなの?』 私の言葉と被せるように発せられた彼の言葉はひんやりと冷たく感じた。 「え?」 『秋森のこと』 好き? 私が秋森君を? なんで? 「そ、それは、ど、どういう・・・・・・」 『恋愛的な意味で、だよ』 その質問の真意が分からず、彼にしては珍しく素っ気ない口調に肩がびくっと退くついた。 秋森君の事は、好きか嫌いかと訊かれたら好きの部類に入る。だけどそれは人としてだ。恋愛的な意味で好きだと感じた事は無い。 彼の質問に「そういう気持ちは考えたこと無い」と否定すると、「そっか」とだけ返ってきた。 一体何だと言うのだろうか。 もしかして、私が秋森君の事を好きだったら何か不味いことでもあるのかもしれない。間宮励の友達の女の子が秋森君の事を狙っていたり。無くもない話だ。 ーーそういえば。 以前、秋森君も間宮励の事を気に掛けていたことを思い出す。その理由は未だに訊けないままだけど、もしかして、二人は・・・・・。 ・・・・・・それは、無いか。 あらぬ想像をしてしまい、自分の考え過ぎだとその想像を早々と脳から消し去った。 いくらなんでも間宮励と秋森君がつきあってるなんて、そんなことは無いよね。
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