第5章

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それに気にする所はそこではない。 先程から間宮励の様子に違和感を感じており、もしかして自分は何か彼の気分を損ねるような事を言ってしまったかもしれないのだ。 いつもの柔らかい落ち着いた声色が、やや怒気を含み冷めた色を含んでいるように感じる。 「あ、あの、ご、ごめんなさい」 『え?』 「わ、私、な、何か、か、勘に障ることを、い、言ってしまった、ようで・・・・・・っ、ほ、本当にすみませっ」 とりあえず謝らなければーーそう思い、慌ててその言葉を口にした。 『ちょ、ちょっと待って。急にどうしたの? 俺、何か変な態度だった?』 「え? 怒ってるんじゃ、な、ないんですか?」 『怒ってる? 俺が』 違うのだろうか。私の勘違い? 『・・・・・・~~っ、はずっ』 「え?」 うまく聞き取る事が出来ず聞き返すと「なんか俺、子供みたいだなって思って」と返ってきた。 『東條さんは何も悪くないよ。ちょっと自覚無くて・・・・・・嫌な思いさせたようで、本当にごめん』 「い、いえ」 いつもは私が謝ってばかりで、間宮励に怒られるのだが、今日は彼の方が謝ってばかりいる。 私が知っている彼ではないような、いまいち不思議な感じだ。 もしかして夏風邪でもひいていたりするのか。連日の猛暑で夏バテをこじらせているのかもしれない。 『あ、あの・・・・・・どこか、ちょ、調子が、わ、悪かったり、す、するのですか?』 「・・・・・・そういうわけじゃないんだけど。最近ちょっと、余裕無くて」 自嘲気味に言われた言葉は、まるで独り言のようだった。
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