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少しテレビの音が大きいような気がして片手でテーブルの上に置かれたリモコンを手に取り、電源オフのボタンを押す。
「あ、あの・・・・・・、だ、大丈夫ですか?」
『え?』
「な、悩み事とか、あ、あるんですか?」
『悩み事・・・・・・』
「あっ、わ、私の思い過ごしなら、い、良いです、けど。な、なんか・・・・・・そ、そんな気がして。元気がな、ないなって、思って。あ、あのーー」
『うん、東條さんの言う通りかも。少し、元気ない』
「あっーー」
私に出来る事があるなら悩み事でも何でも聞きますよーーそう言おうとしてハッとした。
私、何を言おうとしているの?
間宮励の事は諦めるーーそう決めたじゃないか。彼の力になりたいなんて、身のほど知らずの馬鹿野郎だ。私なんか何の役にも立たない。彼にはもっと素敵な彼女が沢山いて、私じゃなくても良いのだから。
私がでしゃばった所で、彼に迷惑が掛かるだけ。
「わ、私ーー」
『でも、東條さんの声が聞けただけで充分かも』
ーーえ?
お世辞だろうか。それとも社交辞令か何か。
私の声なんて、何の励ましにもならない。それに、私よりももっと適任な人が沢山いるはずなのに。
「あ、あの、わ、私で、よ、良かったのでしょうか?」
『うん。東條さんが良かったんだよ』
途端、足の裏からじわじわと何かが競り上がってきて、体中がむず痒くなった。顔と耳が妙に熱い。胸が堪らなく締め付けられるこの感じ。
ーーああ、好きだ。どうしようもなく。
好きな人にそう言われ、喜ばない人なんていない。
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