第6章

2/41
277人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
長いと思っていた夏休みはあっという間に終わってしまった。 夏休みの後半は朝比奈さんと本屋やカフェ巡りなど、週に最低でも一回は会っていたせいか、今までの夏休みの中で一番短く感じた。 今年の夏は色々会ったけど、楽しかった。 結局、間宮励からの電話はあれから一度も無かった。 友達も彼女も多い彼の事だ。きっと予定がびっしり埋まっているのだろう。 ーー私を相手にしている暇なんて無いよね。 寂しいという気持ちを誤魔化して「これで良いんだ」と自分を納得させる。 始業式が終わった後、一時間程度のホームルームがあるらしく、皆、教室で先生が来るのを待っていた。先生が来るまでの間、本でも読んでいようと思い、自分の席に座り鞄から読み掛けの文庫を取り出す。 三頁ほど捲った所で、教室の扉が開く音がして、読んでいた文庫を閉じた。 「はい、始業式お疲れー。直ぐ帰りたいと思うけど、もう少し我慢なー」 先生はそう言いながら教壇に立ち、教室を見渡し「ん? 間宮以外はいるな」と生徒の出席を確認した後、「まあ、良いか。ホームルーム始めるぞー」と少し気だるい様子で話し出した。 「皆も予想しているかもしれんが、二学期は修学旅行がある。今日はその班決めをするぞ。とりあえず男女合わせて五、六人程度で班を決めてくれ。細かい説明はその後だな」 相変わらずのざっくりとした説明でホームルームが始まった。 クラス中は一気に騒がしくなって、各自仲良しのグループが纏り出した。 ーーどうしよう。朝比奈さんは私よりも仲が良い友達もいるし。空いてる班に入れて貰う感じになるかも。 こういう班決めは昔から嫌いだった。 友達がいない私が悪いのは分かっているが、毎回名前の順で良いじゃないかと思ってしまう。 「東條さんっ、一緒の班になろうよ!」 俯いて机の端を見ていたら、綺麗な手が視界に入った。見上げると朝比奈さんが満面の笑みで私を見ていた。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!