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「あ、で、でも、朝比奈さんは、他の友達がいるんじゃ」
「大丈夫だよ。皆にも伝えてあるし、何より私は東條さんと一緒に行きたいんだけど・・・・・・ダメかな?」
「あっ、ぜっ、全然、駄目じゃないですっ」
「本当に? やったー!」
彼女が笑う笑顔を見て、ホッとする自分がいる。私はもう一人じゃないのだと、彼女が伝えてくれているような気がするから。
この嬉しい気持ちを彼女に伝えたい。
「わ、私もっ、あ、朝比奈さんと、いっ、一緒の班に、な、なりたかったので」
「東條さんっ・・・・・・、嬉しいっ!」
朝比奈かんは目を潤ませて、ぎゅうっと私を強く抱き締めた。彼女の甘い香りが鼻を霞め、心も体も温かくなる。
「ーーおい」
朝比奈さんが、そっと体を離した時、隣から声を掛けられ、視線を移すと、どうやら声の主は秋森君だったらしく、こちらに顔を向けていた。
「秋森君、どうしたの? あ、もしかして煩かったかな?」
朝比奈さんが、秋森君の顔を伺いながらそう訊くと彼は「違う」と首を横に振った。
「俺も班に入れて欲しいんだが」
「え・・・・・・」
秋森君の意外な言葉に、私と朝比奈さんの声が重なった。
普段無口で、クラスでは一匹狼的な位置にいる彼が自ら声を掛けてくるなんて珍しい事だった。
「えっと、東條さんが良いなら私は全然構わないかな。・・・・・・それに、私達もまだ二人だし、どっちみち男子とも組まないとだからね」
朝比奈さんは最初は少し動揺した様子だったが、口許に人指し指を添えて、先程先生が言っていた「男女合わせて五、六人」という言葉を思い出した様子で言った。
「わ、私も、だ、大丈夫です」
寧ろ、秋森君なら大歓迎だ。
彼とは、夏休みに一度だけ連絡を取った。お祭りでのお礼をちゃんと言いたくて。前よりも少しだけ距離が近くなったように感じる。
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