第6章

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   男女問わず慕われている間宮励、友達が多い美人の朝比奈さん、一匹狼的な雰囲気を醸し出している秋森君、その中に一人、地味な存在である私。何とも不思議なメンバーに教室の視線がひそひそと集まり、居た堪れない。  このメンバーだと、私だけ異様に浮いている事は自分が良く分かっている。誰にも気づかれないように膝の上で拳を握り、下を向いて唇を噛み締める。  ーー気にしない。気にしちゃ駄目だ。 「……俺、やっぱり違う班に移ろうか? 六人の班の二人と交換して貰うようにお願いすれば、聞いてくれると思うし」  ーーえ?  間宮励の一言に思わず顔を上げる。 「え? もう決まった事だし、励がそこまで気を使わなくても」 「いや、俺がいるせいで色々と目立つんじゃない? 満は中学からの付き合いだから慣れていると思うけど、秋森と東條さんはあんまり俺と関わってないから、周りからの視線とか気になっちゃうんじゃないかと思って」  間宮励は困ったように眉を寄せ苦笑いした。朝比奈さんは「そこまで考えてなかった」と思案顔で自らの下唇を人差し指で撫でる。これは彼女の癖で、悩んだり考え事をしている時に良くやってしまうと以前に聞いた事がある。  もしかして、間宮励は、先ほどの私の様子を察し、そのような事を言い出したのだろうか。  以前、私が言った「目立つのは嫌だ」という言葉を気に留めて、自分がこの班に居ることで私に迷惑が掛かる事を心配しての言葉だったとしたら……。  私の思い過ごしかもしれない。だけど、間宮励という男は、例え相手が誰であろうとその場がまるく収まるなら自分が我慢するという一面がある事を私はこの数か月、彼と一緒にいて感じていた。  それで良いのだろうか。いつまでも彼の好意に甘えているままで。  自分が浮いていたって、周りからどう思われたって関係無い。朝比奈さんや秋森君だって、周りの目を気にせずに、一人の私に声を掛けてきてくれた。私だけ、皆の優しさに甘え、間宮励の思いやりの陰に隠れたままでいるのはずるい。  私だって……私だって、本当は--。 「わ、私はっ、平気ですっ!」  爪が食い込むほど強く拳を握り、はっきりと言った。
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