第6章

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「でも、班長は自信ないけど、副班ならやろうかな? 男子と女子でそれぞれ居た方が、お互いの意見も纏りそうだし、何かあった時も連絡取りやすいしね」 「それもそうだな」  朝比奈さんの意見に秋森君も頷き、「これで良い?」と私と間宮励に尋ねる。間宮励は「うん、ありがとう」と言い、私もそれに続くように「お願いします」と小さく頭を下げた。それを確認した後、秋森君は用紙に決まった事を書き始めた。  特に揉め事も無く決まったのは、この二人が面倒事を他人に押し付けようとしない人柄だからだ。   ーー私も見習わないと。  二人に比べて私は、いつも自分の事ばかり考えて一歩を踏み出す事が出来ない。「誰かの為に」という考えよりも先に「私に出来るのか」という保身的な思考をしてしまうのだ。  その事が少し情けなく感じ、誰にも聞こえないように溜め息を吐く。 「どうした? 東條」  どうやら暗い感情が顔に出ていたのか、秋森君が声を掛けてくれた。それに対し「なんでもい」と首を横に振った。  また心配を掛けてしまったーーと自己嫌悪に陥ると「東條さん」と間宮励に名前を呼ばれる。 「班長は秋森、副班は朝比奈で決まりだけど、俺も東條さんも二人に協力すれば良いんじゃない?  四人で楽しい修学旅行にしようよ」 「えっ? あ、はいっ」  急に話を振られ驚いた。  まるで、私が何もしない自分を後ろめたく感じている事に気付いたような台詞だ。彼の洞察力の良さに、少しだけ気持ちが楽になった。 「--ところで、修学旅行って、どこになったんだっけ?」  突然の間宮励の発言に、朝比奈さんの「え?」という声と秋森君の「は?」の声が重なった。 「励、まじで言ってるの? 随分と前に決まったじゃない」  朝比奈さんが呆れたように言う。 「俺、良くサボるし、あんまり興味無いからさ」  その間宮励の言葉に、「ああ、そうだ。彼は絵を描くことが好きだから、それ以外の事に対する興味は薄いんだっけ」と、彼の性格を振り返る。勿論、彼が美術部に所属しているという事はあまり知られていないらしいが。 
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