第6章

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 我が校の修学旅行先は、京都と奈良、大阪の近畿地方、そして、沖縄、北海道のどれかを、毎年、一学期の半ばに行われる全校集会で生徒会長がくじを引いて決めている。  今年は北海道だ。  確か、一番人気なのが北海道だから、二年の殆どが喜んでいたのを覚えている。  間宮励が知らないのか覚えていないだけなのかは分からないが、恐らくその全校集会の時はさぼっていたのかもしれない。 「今年は北海道なんだよ! めっちゃ楽しみだよね~!」 朝比奈さんは目を輝かせて言った。 「そうなの? 俺、寒いの苦手だからなぁ。まあ、料理が旨いから良いけど」  修学旅行は十一月だ。文化祭が終わった後に行く為、毎年、生徒のテンションが異様に高いと聞いている。  その時期は、関東だとまだ本格的に寒くないが、北海道だとそうも行かないだろう。 「励は北海道、行ったことあるの?」 「三回くらいあるよ。暖かかった時期だけど」  三回も行ってれば、ある程度の観光名所は巡っていそうだし、そう考えると今年の彼にとって今回の修学旅行は楽しむ所が他の人と比べ少ないかもしれない。  私は一度も行った事が無いから、今日の班決めを得て、今から既に楽しみな気持ちが増すばかりだった。 「冬の北海道は行った事ないから、少し楽しみかも。……ね、東條さん」 「へ? あ、え、と……はい」  急に話を振られ、戸惑いながらも返事をする。  くすりと小さく笑う間宮励の目は、真っ直ぐに私を見ており、何もかも見透かされているようで落ち着かない。  自分の気持ちがばれないようにしないと。  間宮励と距離を置く事は、少し先伸ばしになりそうだが、この胸の奥に秘めた彼に対する恋心は、絶対に知られないようにしなければと固く思った。
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