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「なんか、雰囲気が変わったね」
ーーえ?
「ふ、雰囲気、ですか・・・・・・?」
夏休み前から、髪型も変えておらず相変わらず化粧っ気もない。
「な、何も、変わって、な、ないですが」
「そう? 少し明るくなったような・・・・・・どことなく女の子っぽさが増した感じ?」
「は、はあ」
「少し可愛くなったかも」
「・・・・・・っ!?」
突然の言葉に思わず両手で顔を隠してしまった。
恥ずかしい思いと居たたまれないむず痒しさと、何より好きな人から言われる「可愛い」の嬉しさが、同時に顔に集まってきて、絶対に変な顔になっている。
ーーこんなのお世辞なのに。分かってはいるのに、体は正直に喜んでしまう。
これでは、私の気持ちがバレてしまうのは時間の問題なのでは・・・・・・。
「もしかして、東條さん、照れてる? 」
「っ~~!」
「ははっ、素直過ぎ」
必死に自分の気持ちを抑えようとしている私の気も知らず、彼はいつもの爽やかな笑いを溢した後、私とは逆の余裕そうな表情で「そういうところも良いよ、可愛い」と言葉を続けた。
はっきり言って心臓が持たない。
「か、から、からかわないでっ、く、ください・・・・・・」
「ごめんごめん。でも本当だから。俺の言葉に素直に反応してる東條さん見ると、ああ、女の子だなって、可愛いって思ったよ」
カァッと耳まで熱くなっていくのが自分でも分かった。
ーー女の子・・・・・・。
当たり前の言葉だけど、彼が言うと歯痒く感じてしまう。
ちゃんと女の子として思ってくれているんだーーそう思うと、安堵を含んだ喜びが胸をいっぱいにした。
「あ、の・・・・・・ありがとう、ござ、います」
「うん」
指の隙間から、こっそりと彼を除き見ると、優しい瞳で私を見る彼と目があった。甘い微笑みを返されただけで、脈がまた加速する。
「ーー修学旅行の事だけど、まさか東條さんと一緒の班になるとは思ってなかった。改めて宜しくね」
「こ、こちからこそ・・・・・・」
私も間宮励と一緒の班になるとは少しも思っていなかった。不思議なことに、こうやって彼が目の前にいても実感が湧かないでいる。
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