第6章

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 ーー二年に上がった時は、絶対に関わる事はない雲の上にいるような人だと思っていたのに。  好きという感情を抱くだけで無く、修学旅行も一緒の班になって、自分でも驚くくらい彼との関わりが増えていく。  好きな人と一緒の班になって高校の一大イベントでもある修学旅行を過ごせるなんて、これほど嬉しい事などないはずなのに、戸惑いの方が大きかった。  彼の傍にいると自分の思考に反して、身体と心が反応する。今だってそうだ。  「好き」がどんどん加速する。  こんな私が、彼の事を好きだなんて、もし本人に知られたら……。友達になりたいと言ってくれた間宮励の気持ちを考えると、自分の淡い恋心はとても不純なように思える。  彼と友達になりたいという想いは変わらない。でも、この不純な気持ちがこれ以上を大きくなってしまったら、彼を裏切ってしまうような気がした。  友達になれただけで、私は十分だからーー。 「……」  自分の赤くなった顔を隠していた両手はいつのまにか膝の上に置かれていた。  そして、少し冷静になった時、彼に伝えなければいけないと思った言葉を言う為に、ゆっくりと息を吸って口を開いた。 「あ……の、ま、間宮、くん」 「ん?」  私の呼びかけに彼が優しく応える。 「あ……、あ、あり、が、とう」 「え? どうしたの、急に」 「しゅ、修学旅行の、は、班……一緒の班に、な、なった時、い、嫌な顔とか、しないで、ひ、引き受けてくれて……。ほ、本当は、いつも、一緒にいる、と、友達とかがいた、はず、なのに……」  班決めの時、先生が半ば強引に提案した事だけど、彼はそれを素直に引き受けた。  その時は、突然の事に、私自身も彼の気持ちをきちんと考える所まで余裕が無く、彼の優しさに甘えていた。間宮励は本当は誰か違う友達と一緒になりたかったのではないだろうか、私達の気持ちを優先して無理してないだろうかと、彼の気持ちを考えてやれなかった後ろめたさと不安が今更になって心の底から湧いて出てきたのだ。
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