第6章

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 クラスの中でも、関わりのある二人が出ると思うと、ちゃんと応援しないとーーそう思った。勿論、同じクラスメートの子なら、誰がと言わずに、きちんと応援しないといけないのは分かってはいるが、根底に「自分が応援したところで」という思いがあるからか、例えクラスメートの子でも、話したことの無い子だと、どうしても気おくれしてしまうのだった。  途端、一際高い声が響き、周りにざわめきが起こる。何事かと思い当たりを見渡すと、いつの間に集まったのか、女の子達が興奮した顔で円を描くように集まっていた。 「ちょっと待って……ここにいる女子、みんな励が目的なの?」  隣にいる朝比奈さんが呆れたように言った。それを聞いたクラスの女の子達も苦笑いを浮かべる。「私達の応援なんて、必要無いみたいだね」とその中の一人が乾いた笑いと共に言った。  彼女達がそう言う気持ちも分かる。ここの周りにいる女子生徒は、間宮励が飛ぶ姿を一目拝見しようと、学年問わず、かなりの人数の子が集まってきているみたいだ。同じ理系の生徒だけでなく文系の生徒もいる。  その注目を浴びている当の本人はというと、先ほど飛び終わった山田君と、楽しそうに談笑していて、周りの様子など全く気にしてないようだった。  ーーやっぱり、モテるよね……。  こういう光景を目のあたりにしてしまうと、改めて彼の人気を実感してしまう。 「励ーー! 頑張ってーー!」  朝比奈さんが大声を上げて、彼に向かって大きく手を振った。その声に気付いた間宮励が、此方の方を振り向く。すると、ばちっと目が合ってしまった。  ーーあ……。  彼は一瞬驚いたように目を見開いた後、その整った顔をくしゃりと歪めて、嬉しそうに笑った。当然ながらその笑顔を目にした周囲の女子生徒からは甲高い悲鳴が漏れる。 「……励のあんな笑顔、初めて見たかも」  ーーえ?
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