第6章

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「これで、励か秋森君のどちらかが成功すれば、高跳びは私達のクラスが一番だね」 「よし! 応援も負けてられないね!」  クラスの女子達が、応援に気合を入れるのを聞いて、私もしっかりと応援頑張らないとーーと心の中で拳を握り意気込んだ。  間宮励は、先程飛んだ一年生と一言二言交わした後、スタートの位置に着いた。 周りが一気に静かになる。彼は、大きく深呼吸をして走り出す。地面を蹴ったのと同時に体が宙を舞った。  ーー飛べた!  しかし、完璧に飛べたと思ったのに、体のどこが当たってしまったのか、バーがカランカランと音を鳴らして地面に落ちた。  「惜しい!」「頑張って!」と、周囲から応援の声が飛び交った。殆どが間宮励を応援する為に集まった女子達の声だったのだが、彼の耳にはその声は全く聞こえていないかのように、静かにマットから体を起こし、スタートの位置へと戻っていた。   ーーやっぱり、この高さは難しいだ……。  そう心のどこかで、諦め染みた事を思ってしまった。だけど、スタートの位置に再び着いた彼の顔は、真っ直ぐ前を向いて、設置されたバーを睨むように見詰めていた。  間宮励は、全然諦めてない……。 「……間宮くんなら、飛べるよ……、絶対」 気付いたらそう呟いており、胸の前で祈るように両手を組んだ。  もう何度目かの彼の飛ぶ姿は、惚れた欲目を抜きにしても誰もが見惚れてしまうほど、綺麗だった。その一瞬、周りの雑音が聞こえなくなり、目に入るのは彼の姿だけ。 「……あ」  誰かが一言呟いた。自分の声だったかもしれない。  その瞬間、周りから一斉に歓声が沸いた。 「すごーい! 励飛べたね!」 「あ、は、はいっ……!」  朝比奈さんが私の両手を取って、興奮した表情で言った。   「これで、秋森君が飛べなくても私達のクラスが一番じゃない?」 「一番、二番でワンツーフィニッシュ狙えれば、その分、クラスの加点になるよね?」  間宮励のジャンプが成功した事で、クラスの子達が盛り上がるのを聞いていると、朝比奈さんが大きな声で「励ーー! おめでとっ! すごかったよ!」と、両手を振った。その声に気付いた間宮励は此方を振り向き、照れくさそうに片手を上げる。
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