第6章

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 山田君が走って行く背中をなんとなく見詰めていると、後ろの髪に誰かが触れたような感覚がし振り向いた。 「ごめん。粉、ついてないかなと思って」 「あ、い、いえ……」  どうやら髪に触れたのは間宮励だったらしく、先ほどの山田君の手についていた粉が、私の髪についてないか確認してくれたようだ。  至近距離で彼と目が合ってしまい、途端に気恥ずかしくなり、一二歩、後ろへ下がった。 「ーー何それ」 「ん? 何か言った?」  いつもより低い声で発せられた秋森君の言葉に、間宮励はとぼけたように笑って返す。そんな二人を見て、朝比奈さんは「まあまあ」と苦笑した。暫くすると山田君が戻ってきた。 「それにしても、二人とも本当に頑張ったよね」  朝比奈さんが先ほどの間宮励と秋森君のジャンプを思い出しながら言った。その言葉に山田君が「そうそう!」と笑いを堪えるような口ぶりで返す。 「こいつ等、何か途中から急に本気出しちゃってさ。同じクラスだから、どちらかが最後まで残れば十分だったのに、最終的に二人で競い合って飛ぶようになっちゃって。他に飛ぶ奴等が色んな意味で引いてんのな」  ーーそんな事があったんだ。遠くからでは、全然分からなかったな。  やはり、性格とかが正反対な二人だから、こういう場面に遭遇すると、競い合いたくなってしまうのだろうか。    そんな事を考えていると、朝比奈さんが「あ! やばっ!」と叫んだ。 「次の競技の集合時間忘れてた! もう直ぐだ!」  どうやら朝比奈さんが出る走り幅跳びの時間がもう直ぐのようだ。 「ちょっと行ってくるね! あ、東條さん、お昼一緒に食べようね! 終わったら直ぐ連絡するから!」 「え、あ、ちょ……わ、私もーー……」  私も一緒に行くーーそう言う前に、彼女は行ってしまった。よほど慌てていたのだろう、致しかたない。彼女が飛ぶ時間まで、まだ余裕があるはずだ。それまでに間に合えば良いだろう。
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