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「ーーつーか、励、俺たちも、早く行かないと!」と、山田君が急がすように声を上げた。その言葉を投げかけられた間宮励が、「次、何かあったっけ?」と眉間に皺を寄せた。
「はあ?! 一年生のダンスだろ! 町田達と見ようって約束したじゃん!」
「あー……、した」
山田君が言うダンスというのは、毎年一年生の女子が流行りの音楽に合わせ衣装を着て踊り、その出来栄えを判定して競う種目で、それを楽しみにしている男子生徒は結構多い。所謂「可愛い子探し」といったところだろう。
ーー去年、私もやらされたなぁ。すっごく嫌だったけど。
人気のアイドルグループの真似をしてセーラー服で踊った去年の体育祭での黒歴史を思い出し、今年はやる必要なくて良かったと心の底からほっとする。
「それ、俺も行かないと駄目なの?」
「何言ってるんだよ! 当たり前だろ!」
「はぁ……」
興味が無さそうな間宮励に対し、山田君は食い下がらず彼の肩に腕を伸ばし、なにやらこそこそと話した後、間宮励は「仕方ないなぁ」と言った。
「じゃあ、俺たちもう行くな~! 二人とも、午後も競技出るんだろ? ゆっくり休んどけ~!」
「またね、東條さん、応援ありがとう」
間宮励と山田君は、私と秋森君を残して、一年生がダンスを踊る場所へと行ってしまった。
「あ、秋森君は……い、行かなくても、良い、の、ですか?」
「ああ、興味無いから」
「そ、そうですよね……」
確かに彼は、女の子を物色するような男子には見えない。一途で誠実そうだ。
「ここ暑いし、日陰に行くか?」
「え? あ、は、はい」
秋森君の誘いに、小さく返事をし、彼の後ろに付いて行く。
食堂と校舎を繋ぐ渡り廊下に付くと、建物と建物の間を涼しい風が通り抜け、ひんやりと気持ち良い。屋根の下は日陰になっており、タイミングが良く、生徒が一人もおらず、グランドの喧騒と一変して静寂に包まれていた。食堂の前に設置されている自動販売機の横にはベンチが二つあり、その片方に秋森君が腰を下ろしたので、少し間をあけて隣に座った。
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