第6章

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 以前から、間宮励は秋森君の話をすると、何故か少しだけ不機嫌な声色になる。  男子の人間関係に関しては、全く知らないので、二人がどういう仲なのか不明だった。教室で見る限りだと、特別接点などないように見える。しかし、修学旅行は一緒の班になったわけだから、何か二人の間に蟠りがあるのなら、少しでも解消しておいた方が良いのではないだろうか。  ーー間宮君も秋森君も、二人とも優しいのに何でかな……。 「な、なんか……い、嫌です」  気付いたらそう言葉にしていた。  あ、やばいと思ったけれど、一度言葉に出してしまったばっかりに、どう誤魔化せば良いか分からず、気まずさで彼の顔から足元へと視線を移した。 「ま、間宮君は、秋森君のこと……、き、嫌い、なんですか?」 視線をそのままにして、恐る恐る聞いてみた。彼からは何も返事がなく、慌てて言葉を繋げる。 「た、確かに、あ、秋森君は、無口で、ぶ、無愛想に見えるかもしれないけど……、悪い人じゃないですよ……。ち、中学の時から、ずっと、こ、こんな私にも、声掛けてくれて……困ってると助けてくれました。す、少なくとも、私にとっては、そ、その……大事な友達なので……」  話している途中で、何人かの生徒が横を通り過ぎる。「東條さん、こっち」と手を引かれ、通行の邪魔にならないようにと、近くにあった木の陰に案内された。 「ごめん、何か、気を悪くした?」  その言葉に、顔を上げて彼の顔を伺う。怒っているとばかり思っていた彼の表情は珍しく焦りの色を露にしていた。  そして、「秋森の事を嫌いなわけじゃないんだ」と呟くように口にする。  しかし、その後は無言になってしまい、彼の横顔は少し困惑しているようだった。  そんな彼の様子を目の前にして、私は焦ったように口を開く。 「あ、あの……! わ、私はだた、その……悲しくて。ふ、二人とも、良いところが沢山あるのに、それを知らずに、き、嫌い合っていたら、それは、すごく、も、勿体無いことだと、お、思うので」  「だから少しでも仲良くなって欲しいと思ったんです」と最後に言葉にした。  出過ぎた真似をしたかもしれないと後悔したのは、その直ぐ後だった。
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